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北条の登録有形文化財 宮本家

二つ目の記事では私の訪れた住宅についてお話しします。私の専攻は建築デザイン領域で、北条について事前調査を行った時に北条には登録有形文化財である建築物「宮本家住宅」があることを知りました。登録有形文化財とは、いったい中の様子はどうなっているのか、興味が湧いたので建築の勉強もかねて今回の北条街歩きで私は登録有形文化財である宮本家住宅に訪問することを決めていました。宮本家は北条ふれあい館からすぐのところにありました。外観は日本家屋そのものといった様相で、玄関は道路より少し下がった位置にありました。後に主人に伺った話によると、度重なる作り替えで道路の方が高くなっていったとのこと。



中に入り挨拶をするとすぐに住まいの方から主人が出てきて、尋ねた理由をお伝えすると快く取材を受け入れてくれました。話の内容は僕が建築の学生ということで宮本家の建物について主にお話をしてくださりました。宮本家は今から約176年前に醤油の店蔵として建てられました。現存する建物八棟すべてが国の登録有形文化財です。土蔵であることが特徴で防火性能に優れていて、店蔵のある北側と東側、西側二方向に中が土壁の板塀があり三方向からの防火性能が高くなっています。当時は物(プロダクト)の価値が高く、火災から人や物を守るために土蔵で造られたそうです。また、土蔵建設にはお金がかかるので、金銭に余裕のある商人だからこそ出来た建築であるそうです。また、宮本家には主人曰く土蔵だが店蔵として見栄えを良くする為の様々な工夫が凝らしてあるそうです。



店の一階部分の天井には無数の太くて長い梁があり、その頑丈さが窺えます。実際、東日本大震災の時には屋根は崩れてしまいましたが、躯体は丈夫であった為復興の際には屋根を張り替えるだけで済んだそうです。天井の梁は二階建ての土蔵にとって必要以上に多く打ち付けられており、これは店を立派に見せる為の見栄の為だそうです。確かに無数の大きな梁を下から眺めると威圧感があって立派な空間であるように感じられました。また、店の壁にも板が張られており、土蔵である一階部分の土壁を隠して店内部を格好よく見せるための工夫だそうです。



このいかにも年季の入ったレジも見栄を張る為に使われたそうです。このレジはまだ動かすことが可能で実際に目の前で動かして見せてくれました。まだ動かせるのかと非常に驚き、感動したのを覚えています。このレジはアメリカからの輸入品だそうで購入時の証明書を見せてもらいました。大正九年に購入されたレジの値段は当時の価格で1400円、現在の値段に直すと1400万円だそうで、確かに見栄を張るには十分な代物だと思いました。しかし、レシートを印字するための紙が大量に余っているそうで本当に使われていたのかどうかは当時の店主のみぞしる、とのことでした。



これは揚げ戸と呼ばれるもので、主に防犯のために使われていたそうです。当時は奉公人が店の入り口付近で寝泊まりをして、更に揚げ戸をおろすことで防犯の役割を果たしていたそうです。揚げ戸も実際に動かすことが出来、下ろして見せてもらいました。揚げ戸には出入り口のようなものがついており、奉公人の出入りに使われたとされています。また、揚げ戸は小さな金具ひとつで創業当時から支えられており金具の頑丈さに驚きました。玄関には格子戸が付けられており、中から外は見えるが外から中は見えづらいという特徴を生かして防犯に使われていました。




この地面は三和土と呼ばれる土の床でこれも格好良くする為に土を叩いて作られたそうです。土で出来ているので梅雨の時期になると床から湿気を感じるそうです。写真右上部分はコンクリ―トで覆われていて、昔目の前の常陽銀行が建て替えを行う時に一階部分を貸していてその時に誤って三和土を傷つけてしまったのでコンクリートで覆ったそうです。この他にも一階部分には実際に使われていた道具や書類、地図や法被、ビンや扇風機、金銭の収集箱や冷蔵庫、蓄音機やレコーダーまで置かれていました。当時の店の雰囲気を存分に味わうことが出来ました。



最後に、大蔵の内部も特別に見せてもらうことが出来ました。大蔵は店蔵から中庭を通ったところにあり、中は広い印象でした。宮本家は地主だったので小作料として米が俵で集められており、それを貯蔵する為に大蔵は使われていたそうです。米蔵として使われなくなると土壁で音が吸収されて生の音が直接聞けるという特徴から音楽ホールとして使われるようになりました。大蔵は二階建てで二階に登ると天井の梁を直接触ることが出来ました。梁は金具を一切使わないで組み立てられており、実際に間近で手を触れることが出来たので非常に興奮したのを覚えています。





今回の訪問で宮本家の建物について、歴史について詳しく知ることが出来ました。突然の訪問にも丁寧に対応してくださった主人の宮本孝さんにはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

参考サイト

宮本家:つくば市‐田舎へ行ってご/見てご!


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