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私のちからで地域を”ちょっと”元気にする

筑波大学の実践型教育

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大学生と地域

大学生にとっての「つくば市」

筑波大学はスーパーグローバル大学のトップ型指定校や指定国立学という特徴を持ち,世界最高水準の教育・研究を行う大学です.従って,そこで学ぶ学生達もそのレベルを求められます.

それと同時に,つくば市に暮らす市民・生活者でもあります.

下記の図は,私が担当するランドスケープデザイン論で行った筑波大学生のつくば市周辺市街地に対する認識の調査結果です.

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この調査結果が出た時,その事実に驚きました.しかし,自分自身の学生時代を思い出してみるとこのような結果も不思議ではない気もしました.

何れにせよ,筑波大生の大半はつくばの周辺地域に行ったこともなければ地域の名前すら知らない,という事実が判明しました.これは,大学生にとっての「つくば市」が大学周辺とセンター地区や研究学園地区で完結していることを意味していました.認識していないのは存在しないのと同じです.

彼らはその認識のまま数年間を過ごし,卒業と同時につくば市を離れていきます.これは,市にとっても大学にとっても損失なのではないかと感じました.少なくとも,私の専門分野であるランドスケープ分野にとっては由々しき事態でした.

思いを行動に移し,カタチにした人々.その声を聴く

2019年のランドスケープデザイン論では,【周辺市街地活性化に挑む産官民のリーダー達】と題したゲスト講師による全5回のリレー講演を実施しました.

講師を務めて下さったのは,つくば市役所周辺市街地振興室の皆さん,市役所の強力なパートナーとして活躍する街づくりコンサルの方,デザインの力で地域活性化に貢献するグラフィックデザイナー,地域活性化協議会をパワフルな魅力で牽引するリーダー,ユニークなアプローチで地域の核を担う珈琲店オーナーです.

 

様々な形でR8に関わる皆さんのお話は,学生達を大いに刺激しました.

質疑応答では,学生ならではのユニークな質問も出され,講師が戸惑う場面などもみられましたが,就職活動を経て社会に出ていく彼らにとって考えることも多くあったようです.

何に価値を置いてどう生きるか,学内では得られない学びが実践型教育にはあると感じます

実践型教育の先に目指すもの

知らないなら知ればいい.行ってないなら行けばいい

上記のアンケート結果を鑑み,「学生を学外に出し,地域に触れさせる」「地域の歴史や生活を現場で感じさせる」「人々の暮らしや価値観が表出している姿 = ランドスケープ を自分の言葉で表現する」等を授業に反映させることにしました.

地域ごとに担当学生を定めることで,全体を薄く知るのではなく一つの地域と深く関わることを目指しました.学生達は自分の担当になった地域へ入り,地域の魅力を発見し,取材を行い,記事にして発信します.地域を歩き,地域の方々と触れ合う事で学生達は様々な学びを得ます.

 

その成果はwebによって人々に広がり,地域を知るきっかけを提供します.つまりこれは,学生に対する教育的効果とともに,学生による社会貢献の成果でもあるのです.

更には,地域の住民の方々には自分達の暮らしの魅力の再発見を促し,域外の方々はつくば市周辺市街地に関心を持つきっかけの創出になっていきます.

足元での行動.それが生き方を動かすかもしれない

 

実践型教育は大学に限らず様々な段階の教育現場で行われています.その内容に対する解釈も多様です.勿論,筑波大学の中にも様々な実践型教育が展開されています.

私は教育学の専門家ではないので詳しいことには言及できませんが,多様な手法や目的があって当然と思います.

私が目指す実践型教育は,教育のための教育では得ることが難しい益をそれに関わる全ての人が得ることです.つまり,学生・地域の方々・役所の方々・教員自身・将来の人々など,誰もがそれに関わった事で得るものがあり,かつ自分の行いが他者に利益を与えている.Winwin,三方良し,一粒で二度美味しい,という感じ.

学生にとっては単位を得るためだけの活動かもしれません.でもそれはそれで良いし,無理にそれ以上を求めることもしたくありません.たとえそうだとしても,学生がもたらした成果は地域活性化に貢献しているし,それで十分なのです.

確実なことは,地域に入った学生はそれまで知りもしなかった場所を今では知っていて,「ちょっと語れるくらいには詳しい人」になっています.そういう場所がつくば市内にあって,そこで起こっている活動が気になったりする.その地域のランドスケープを知っていて,卒業してつくばを離れたあとも,その風景を思い出すことができる.

​人々の暮らしと土地の履歴を知り,交流し,生活景を学び取る.多様な人々の価値観や行動に触れた経験は,将来なにかに影響を与えるかもしれません.

環境デザインを学ぶ大学院生の実践力

地域活性化のためのアクション

 

大学生を対象にしたランドスケープデザイン論では,「学生を学外に出し,地域に触れさせる」「地域の歴史や生活を現場で感じさせる」「人々の暮らしや価値観が表出している姿 = ランドスケープ を自分の言葉で表現する」等を授業に反映させ,その成果をブログ記事として発信しました.

​一方,大学院生を対象にした演習授業では,学生一人一人がそれぞれプランを考え,自らのプランを主体的に実行しています.

この授業を受講する大学院生は環境デザイン領域に所属する学生達です.本学では「環境デザイン」を,現代における「人間回復」のための、「環境づくり・空間づくり = デザイン」を総合的に学ぶ分野であると位置付けています.その環境デザインを専門的に学ぶ学生達が,現実社会に飛び込んで奮闘しています.

たとえ小さく些細なプランでも,地域が求めていて,その実現を喜んでくれれば,そのプランは大成功です.

 

このウェブサイトのサブタイトルに掲げた「わたしのちからで地域を”ちょっと”元気にする」.この言葉には,その思いが込められています.

小さな活性化プラン" がカタチになるまで

 

地域の声を聞く

活性化のデザインで大切なのは「知る努力を怠らないこと」,「思いに気づいてカタチにすること」,「エゴを押し通さないこと」.プランを提案する前に,「知る」という過程を大切にし,沢山の人々へのインタビューを行いました.

インタビューは,対面にしろオンラインにしろ人と人とが会話をします.聞き出す事に注視してしまいがちですが,聞く態度や表情やリアクション,会話をスムーズに運ぶための基礎知識や相手を知るための下調べなど,準備から本番まで,五感をフル稼働させて臨まなければなりません.

インタビューは,インタビュア役の他,サブインタビュア,記録係,撮影係などに分かれ,各回ごとに担当を分担していきました.これまでも既にインタビューの経験を重ねた学生もいれば,初めてインタビュア役を務める学生もいました.回を重ねるにつれ,学生達のインタビューは上達していきました.ここで得た経験は,研究調査に活かされたり,社会に出たあとの仕事上で活かされるのではないかと思います.

インタビューを受けてくださった皆さんのご理解とご協力のもと,その成果がインタビューのページにまとまりました.

地域と学生が力を合わせる

活性化のデザインで私たちが大事にしたこと.それは地域の資源と住民の皆さんの思いを読み解き,学生が地域に関わり,共に何かを作り上げていくプロセス自体です.

学生が主体的に周辺地域と関わり,自らの経験とアイデアをもとに活性化のプランを考えていきます.

具体的には,大曽根地域でハンセンと今泉,栄地域で濱中と勝山,上郷地域で劉,高見原地域で嶋田が活動しています.

各学生の『小さな活性化プラン』は,その内容も実施時期も地域ごとに様々です.その理由は,地域の方々と協働しながらプランの検討と実施を進めているからです.

プランを準備する過程では,譲ったり妥協したり考え直したり,主張したり説得したり・・・と,思い通りにならないことあるでしょうし,意見の衝突もあるでしょう.予期せぬ出来事が起こることもあるでしょう.それも全て,そこが現実社会だからです.大学の中だけでは決して得ることのできない経験をしています.

 

彼らは学生ではありますが,社会の一員として責任を持ちながら,甘えることなく向き合っています.

このような経験を学生のうちに得て,様々な事を学び,環境デザインのモノの見方を備えた社会人として活躍してほしいと願っています.

学生達の『小さな活性化プラン』は現在進行形で進められています.その様子は活性化プランのページで紹介されています.

私達の一番の喜びは,学生達がつくったプランにあなたが参加してくださることです! ぜひ,『小さな活性化プラン』にご参加ください.

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