地域活性化活動と、そこから得た学び
明治大学 木寺ゼミ「Bond Job(ボンジョブ)」のメンバー
平野宥人さん、池田大樹さん、森田洸輝さん、オケチュクカレンさんに聞く
聞き手・構成 濱中いずみ
つくば市上郷地域で、地域活性化活動を行っている「Bond Job(ボンジョブ)」さんに、活性化活動の背景や、企画実施の様子などについて様々お話を伺った。
「Bond Job」の活動は、明治大学 政治経済学部 木寺ゼミナールに所属されている6人が主体となって行っている。2020年に、「職場体験・マルシェ・フォトアート」の3つの企画が組み込まれたプランが採択され、これまで活動を続けてきた。
「Bond Job」さんが活動していた場所は、つくば市R8地域の一つである「上郷」。この地域は、つくば市の西部に位置し、自然豊かで歴史もある場所で、様々な業種の店舗や農場など多様な産業もある。
今回は、3つの企画の背景と、「職場体験」の活動を中心に振り返っていただき、印象に残ったことや苦労した点などについて詳しくお話を伺った。
―まず、プラン応募の背景について教えてください―
所属しているゼミでは地域活性化のコンペなどにも多数応募していて、活性化に関心を持っていました。大学生の自分達が、地域の方と協力し、地域活性化活動を実践するきっかけを探していたところ、運命的に「つくばR8地域活性化プランコンペティション」に出会いました。
実際にR8地域を現地視察してみて、特に上郷地域に魅力を感じ、関心を持ちました。上郷では、「世代間交流が少ない」「豊富な地域資源があるにもかかわらず生かしきれていない」という課題が見つかってきました。そこで、「この資源を活用して地域の魅力を高め、他世代と関わる機会を増やしたい」という上郷活性化への気持ちが高まっていきました。
―3つの企画(職場体験・マルシェ・フォトアート)を企画した背景を教えてください―
まず、課題であった世代間交流を生み出すということで、大人(特にシニアの方など)と子供の交流を生み出せないかを考えました。上郷には、色々な業種の店舗や産業があるので、その店主の方と子供たちが、お互いに楽しく交流できる仕組みを作れないかと考え、職場体験の企画が生まれました。体験を通して、「教える・教わる」という関係の中で自然なコミュニケーションを作ることができたと思います。
そして、単発の企画ではなく1年を通して、上郷の活性化に関わりたいと思いました。職場体験を年に複数回開催することは難しいので、違う形での交流の場として「マルシェ」を考えました。買い物を通しての交流はもちろんですが、子供達が職場体験先の方と再交流できたり、地元のお店に新しく興味を持ったりなど、職場体験との繋がりや循環も考え企画しました。マルシェは、次の活動に繋がる資金にもなると思っています。
「フォトアート」は、「職場体験」「マルシェ」の賑わいの様子や、地域活性化活動の取り組みを可視化し形に残したいと思い、企画しました。
一時的な交流でなく長期的な交流を生み出したいという思いが、職場体験・マルシェ・フォトアートの3つの企画に繋がったのですね。
ー3つの企画の中で、「職場体験」を実施しましたが、印象的だったことや大変だったことはありましたか?ー
実施までの準備は、苦労した部分がありました。2020年の8月にプランが採択され、その後はオンラインでの会議を多く重ねていきましたが、オンラインでは伝わりづらい部分もあり、情報共有に苦戦しました。そこで、対面の方がコミュニケーションを取りやすく関係も構築しやすいということになり、その後はなるべく私たちも対面で会議に参加するようにしました。直接お話しすると、情報共有をする・信頼関係を築くということが、し易くなり対面でのコミュニケーションの大切さも感じましたね。現地に足を運ぶと、リアルな課題を見つけることができたので、その過程も大事だったと感じました。
最初の顔合わせでは協議会の方は歓迎してくださったのですが、自分たちが気を遣って意見を言えない時もあり、「もっと本音で話そう」とご指摘もいただきました。一緒に活動していく中で「本音で話す」のは大事なことで、その通りだなと感じ、そこから心がけるようにしました。
また、「ボンジョブ-協議会-職場体験先」の3者間で連携するに当たって、協議会が仲介役として、ボンジョブと職場体験先を繋いでもらっていたのですが、協議会との情報共有がうまくいかなかった部分もあり、自分たちと職場体験先との間で認識のズレなどもあり混乱した部分もありました。連携して活動を進めることの難しさを感じましたね。
ー「職場体験」の企画で、反省点などはありましたか?ー
職場体験後に参観者の方にアンケートを行い、指摘があった部分について協議会の方と話し合いました。参加者からのご指摘で、「職場体験が地元への理解が深められるものではなく、職業やお店への理解の方が大きかった」というものがありました。上郷の良さをどのように伝えるべきかもっと考えるべきだったと反省し、何を一番伝えたいのかということと、提供する内容とのすり合わせをもっと考えなければいけなかったと思いました。
ー職場体験はとても魅力的な企画だと思っていましたが、その裏には苦労した部分もたくさんあったのですね。お話を聞いていて、最後まで上郷地域の色々な方と本音で話し協力したことが、良い職場体験プログラムの実現に繋がったのだと感じました。
ーコンペの経験を通して、何か自分自身に与えた影響はありましたか?ー
平野さん
海外で活躍したいという思いがありましたが、コンペでの経験や祖父の地元三重県の実情を知ったことがきっかけとなり、日本の地方の課題把握や活性化への興味が高まりました。上郷での実際の関わりを通して、考え方や価値観が変化しましたね。
池田さん
コミュニケーションの取り方を学びましたね。大学学祭の広告協賛をしていた経験もあり、最初は営業的なコミュニケーションの取り方だと思っていました。しかし、何か一緒に作り上げるというときには、良い点も悪い点も言い合うなど本音のコミュニケーションが大切だと実感しました。
また、車がないと生きていけない地域があることを間近で感じ、車などの輸送設備が地域活性化の基盤となりうると感じました。自動車に関わりたいと強く思うようになり、自動車メーカーへの就職活動にも影響しました。
森田さん
職場体験の企画もそうですが、マルシェを私は主に担当していたので、そこから学ぶことも多かったです。以前マルシェを開催していた方からノウハウなどを聞いたりして、そこからの学びも大きかったです。たくさんの事業者さんと関わるので、スケジュール提示など、先を見越して行動することの大切さを学びましたね。
聞き手の感想:
今回は、主に職場体験の企画について、準備から企画終了後まで振り返っていただきました。いろいろなタイミングで苦労したことがあった中で、最後には、協議会や様々な事業者さんと協力し企画を成功させたという過程に感動しましたし、私自身も学ぶ点が多かったです。インタビューでは、苦労した点など快く答えてくださり、ありがたいお話をたくさん聞くことができました。私も、栄地域で小さな活性化活動を実践するので、今回聞いたお話を生かして頑張っていきたいと思います。
この度は、インタビューをお受けいただき、本当にありがとうございました。