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「小さくきちんと」学びをつくる

国際耕種・澤田さんに聞く 

聞き手・構成 勝山祐衣 

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 昨年のつくば市R8コンペティションで採択され、いよいよ今年3月から本格的に「ふるさと菜園s」をスタートした国際耕種。講座を見学させていただいたのち、プラン発案から現在に至るまでのお話を伺った。 

 講座は畑で実際に手を動かす実践パートと講義の2部構成。集まった栄地域の農家からもレクチャーを受けられるのがプランの特徴だ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―プランを実際にスタートしてみてどうでしょうか―

 人や時間の配分、体制づくりなど、まだ手探りの状況です。

 私たちは普段、アジアやアフリカなど主に海外で農業の指導を行っているのですが、この教室では初めて野菜を育てるという人がほとんどです。講座でどんな野菜を扱うか、講義の専門性をどのくらいに設定するか、よく検討する必要があります。簡単すぎても物足りないし、難しすぎてもいけません。

 現在、土曜日の午前中には国際耕種のスタッフとボランティアの農家の方が1人ずつ常駐する体制を取っています。参加者の方から育て方に関する相談を受けたり、ちょっとしたおしゃベりをしたりしています。

見学させていただいて、筑波山が見える環境下での農作業と、講義の絶妙なレベル感がとても魅力的だと感じました。

 

 参加者の方が地域の中で家庭菜園を楽しんで、講座に満足してもらえるのが一番です。私たちとしては、学んだことを持ち帰っていただいて、家でも野菜作りを楽しんでもらうことを大切にしていますが、 地域貢献につながる面が確かにあると感じています。これだけ環境がいいので、何回も通ううちに、きっと栄という土地を好きになってくれるのではないかと思います。

参加者の方数名とお話ししましたが、地域外の方が多そうでした。

 本当に近場の栄から、松代、研究学園、つくばみらい市からもいらっしゃっています。一番遠い人でも40分くらいの距離感ですね。参加者を比較的少数で固定しているので、毎回同じメンバーが集まります。作業の助け合いや雑談を通して、参加者どうしのつながりができやすくなっています。

また、こうした地域外との交流機会だけでなく、地域内での交流機会も作れているようです。 近場から参加しているけれど、これまで地元との付き合いがあまりなかったという方もいて、彼らは菜園sを通して、初めてボランティアの農家さんのような地域の年配の方と関わったとのことです。

どのようにして現在の菜園sの形になったのでしょうか

 つくば市のR8コンペティションに応募したことが大きいです。

 昨年は新型コロナウイルスの影響で活動のメインである海外に行けなくなり、海外に行けない今だからこそ国内でできることをしたいという思いがありました。そういう状況の中で、社員の一人がつくば市のR8コンペティションを見つけて、応募してみようということになりました。

 

 応募にあたり、初めに出てきていた案は現在の形とは少し異なるものでした。つくば市との事前相談の機会に実現が難しいということがわかって、ディスカッションを重ねて、現在の形になったという経緯があります。

 しかし、プランの軸は当初から「筑波山を望む綺麗な景色の中で農業をする」「家庭菜園をする」ということで一貫していました。

 

ーつくば市との相談が、プランの形を決めるきっかけの一つだったのですね。

 

 そうですね。国際耕種はつくばの周辺地域と初めからつながりがあるわけではありませんでした。どこの馬の骨とも知らない会社が地域で仕事するにあたり、信頼獲得が最も大きなハードルになると思いますが、つくば市のサポートのおかげですんなりと地域に入っていくことができました。

 具体的には、栄の協議会の方とつないでいただいたおかげで、地域の農家さんや地主の方とつながりを持つことができました。「菜園s」が実行できたのは、つくば市の細やかな支援があったからだと思っています。

 

 また、まったく実績のない会社が参加者を募ってもなかなか人は集まらないと思いますが、広報つくばで取り上げていただいたことで余りある参加者の方が集まりました。ほかにも、地域施設へのチラシの配布や農政課への相談に便宜を図っていただくなど、細やかな支援をいただいています。

 

ー他の事業と比べて、菜園sで大切にしていることは何か教えてくださいー

 一般的には、農園でご飯を食べるなどイベントを開催する事業もありますが、菜園sではあくまで学びを重視しています。国際耕種の専門性を生かした、本格的な農業を学ぶ場を提供していくためには、実証して間違いない技術を教えていく必要があります。ボランティアで来ていただいている農家さんには、みなさんにそれぞれのやり方があるので、講座をスタンダライズするために、あえて補足的な形で入っていただいています。

ー農家さんの反応はどうですか?

 

 現在、ボランティア農家さんは5名ほどいらっしゃいますが、楽しんで来てくれています。参加者の方に世話を焼きたいおじいちゃんも多いですね。みなさん協議会や地主さんに紹介していただいた、信頼できる方々です。

ープラン発案から現在を振り返って思うことを教えてくださいー

 地域の方や様々な事業者と協力して取り組みをするとき、人とつながり、信頼関係を作ることが欠かせませんでした。

 菜園sも、当初は「続ける意思がある」ということを周囲に理解してもらうことが課題で、これができたからこそ、実行までこぎつけることができました。正直に自分の思っている考えを話し、どれだけそれに本気で熱意を持ってやれるかを理解してもらうことで初めて、協力していただけるのだと思います。 

 

 また、今までは農業のプロ相手に仕事をしてきたので、農業初心者である菜園sの参加者が求めることはこれまでとは全く異なります。

 簡単な支材の作り方や手順、楽しみながらの作業方法を考えることで、勉強になることも多いです。自分たちが工夫しながらやっていることに対して反応が直接あるのは、この事業の醍醐味だと感じます。『楽しい、ありがたい』という声は本当に嬉しいですね。

 この事業を始める以前は、社員がみんな海外の担当があり、協力して一つのことをする機会がほとんどなかったので、会社としても、菜園sは貴重な学びのきっかけとなっていると感じています。

ー今後はどうしていきたいですか?ー

 会社として「小さくきちんと」やっていきたい思いがあるので、このポリシーは引き続き菜園sにも反映していきたいです。

 始まってから日が浅いので、まだ様子を伺っている地域の農家さんとも信頼関係を築いて、一緒に活動する仲間を増やしていけるのが理想です。より地域に根ざした事業にしていきたいと考えているからこそ、やはり私たちの活動の様子を見ている・知っている地域の方々からの理解を重視していますね。

そういう思いがあるので、地域内には情報を発信する一方で、外に向けて広くアピールする必要性は今のところ感じていません。

 

 講座自体については、1年を通しての少人数制だからこそ、参加者の方々からの要望にはその都度フィードバックするなど、あくまでも規模は大きくしないで丁寧にやっていきたいです。

 

ー思い描く今後の展望を教えてください。ー

 「菜園s」の活動は、一過的なものではなく、長期的に取り組みたいと考えています。

 国際耕種としては、会社の事業としてやりたいという思いはありません。むしろ、事業化するのではなく独立させていきたい。そこに会社が協賛するという形で関わっていく形がいいのかなとも思っています。 

 

 筑波山が臨める栄の景観と土地は、本当に貴重な財産です。ご縁あって、こうした素晴らしい場所で実現したのが菜園sなので、土地柄を活かした、より地域に根ざした取り組みにしていけるよう、活動を続けていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞き手の感想:

 仕事である農業指導と、プランの活動拠点である地域への真心を感じるお話でした。短期的・エンタメ的な農体験系のサービスが散見される中で、そこでの学びを大切に活動を行なっている点にとても感動しました。

 見学からインタビューまで、丁寧なご対応をありがとうございました。

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