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執筆者の写真健介 山田

歩いて見つけた”ランドスケープ” 神社に庭園技法⁉

こんにちは。理工学群2年の山田健介です。


ランドスケープデザインを探して今回私がやってきたのは、つくば市の西の端、上郷のさらに西の端に位置する金村別雷神社です。上郷の集落を抜けてしばらく歩くと、突然目の前に立派な鳥居が現れました。

神社の境内に入ったことが分かると、途端に気持ちが引き締まります。ウグイスやセミの鳴き声が聞こえるのに、静けさが感じられます。神社特有の静寂と荘厳さは他では味わえません。

ここで軽く紹介すると、金村別雷神社は平安中期に建立されてから1000年以上にわたって信仰されており、関東三雷神の一つにも数えられている神社です。林の中にひっそりたたずんでいましたが、なかなかすごい神社なんですね。



さて、神社は日本古来の宗教である神道の神々がまつられる場所であり、日本の価値観や文化が深く反映されています。今回は空間デザインの観点からそこを探ってみましょう。


まずは「囲繞」です。地形や生け垣などで囲まれた空間を作る庭園技法です。

この写真は参道から外側に向かって撮影したものです。ここでは、参道の両側が竹やぶで囲まれていました。この奥には大きな川が流れていたり、堤防があったり、その奥には家や工場が立っていたりするのですが、そんなものがあるとは全く感じられません。竹やぶは林よりも密度が高く、視界(音も?)を遮る度合いが高いので、より効果的に空間を分けることができます。外側の空間が見えないことで、神社の中にいるんだ、という意識がより強くなり、気持ちが落ち着くと同時に集中します。神社のような場所では、外界から隔たれた特別な空間であるという神聖性を強める効果もあるのではないかと思います。


2つ目は「障り」です。見たいものとの間に視界を遮るものをあえて配置する技法です。

鳥居から参道に沿って歩を進めていくと、こんな景観に出会いました。参道の両側には桜の木が植えられており、その枝が横向きに張り出しています。枝にはおみくじも結び付けられています。この奥には2つ目の鳥居があり、さらに奥には本殿がありますが、枝葉と重なってしまってすべては見えません。このように景色が重なり合うことで、奥行きや立体感を感じることができます。さらに、枝に近づいたりくぐったりするたびに奥の景色との重ね合わせや視点の高さが変化し、景色が単調にならず楽しさをも感じることができました。


3つ目は「結界」です。何やらかっこいい響きですが、庭園技法でいう結界とは、物理的に大きく遮断せずに領域を明確に示すことを言います。

神社での結界といえば、鳥居です。これは聞いたことがある方もいるかもしれません。鳥居は門の一種といえなくもないですが、扉はなく、物理的に通行を妨げることはできません。それでも、鳥居の内側は特別な空間であるという感覚は確かに覚えます。やましい気持ちがあれば鳥居をくぐるのはためらってしまうのではないでしょうか。このように、鳥居は心理的には強く内界と外界を区分します。鳥居の下を通る参道は神様の通り道でもあり、遮るわけにはいきません。鳥居は「つながり」と「区切り」が共存する面白いデザインだと感じます。


最後は「透視遠近法(ビスタ)」です。空間を両側から直線的に縁取ることで視線を中心に誘導する技法です。

ここでも、まっすぐ伸びる参道を軸に鳥居、並木、灯篭、狛犬が左右対称に並び、奥に構える本殿を引き立てています。本殿は神様をまつる場所で、参道の中央は神様が通る場所とされていますが、それを知らなくてもなんだか神聖な感じがしますよね。ビスタ自体は日本固有のものではありません。しかし、日本各地にある神社や寺の多くは鳥居や門、本殿などが直線で配置され、中心を参道が貫く空間構成をしています。このような空間デザインは、日本に古くからある美意識の一つといえるでしょう。



今回は神社にみられる庭園技法から、日本の価値観を探っていきました。今回紹介したもののほかにも、様々なところに技法が用いられています。皆さんも神社に足を運んだ際は、歴史や宗教の視点に、デザインの視点も加えてみてはいかがでしょう。

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