こんにちは。筑波大学芸術専門学群3年の八木明日香です。
私は筑波大学で日本画を学んでいます。
今回は、私に馴染み深いアートの視点から、金村別雷神社の天井画を紹介していきます。
茨城県つくば市上郷にある金村別雷神社は茨城県・つくば市指定文化財にもなっている創建931年の神社です。
天井画について
明治19年に再建された拝殿の天井には、地元の人にもあまり知られていない116枚もの天井画が描かれています。
これは紀元2600年(昭和15年)記念事業として先々代の宮司、所 士朗が10年ほどかけて描いたものです。先々代は、日本画家の横山大観も学んだ日本美術院で、今で言う通信教育のようなもので日本画を学んだそうですが、ほぼ独学で技法を習得しました。
天井画は112枚の農作画(百穀画)と4枚の龍の絵(白龍・金龍・銀龍・青龍)で構成されており、同じ農作物を題材に描いた絵でも1人の人物が描いたとは思えないほど多種多様な描き方が見受けられます。
農作画
農作画は、御祭神である別雷大神が雷を支配する神であり農作物を育てる恵みの雨をもたらすことから、作物の豊穣などを願って描かれました。農作物のみ描くのではなく小鳥や魚なども混ぜて描いた花鳥画も多くあります。
先々代は西洋画も学んでいたそうで、ヒマワリや馬、フルーツなど西洋的なモチーフを日本画独特の「線」で描く描法で描いており、先々代の美術への探究心を感じられます。
龍の絵
4枚の龍の絵は、雷神様の使いとしての龍が描かれ
ています。右から白龍、金龍、銀龍、青龍が描かれ
ており、特に白龍は特徴的な様相をしています。一
角で口吻が短く、明らかにほかの龍とは違うことが
みてとれます。
保存状態
昭和初期に描かれた天井画ですが、色が鮮やかで劣化が少ないことに驚きました。日本画で使われる絵の具は岩絵具と呼ばれ、その名の通り天然鉱石を砕いて作られる天然絵の具です。その他合成絵具、新岩絵具などがありこれは戦後に開発されました。
天然の絵の具には水干絵の具(泥絵の具)や顔彩と呼ばれるものもあり、これらは耐光力が無いため日光にさらされると徐々に色褪せます。天井という特殊な場所に描かれる事でこれらの作品の色は保護されてきたのかも知れません。
ただ、残念ながら表面に亀裂が走っているものや破れているものなどが何枚か見受けられます。現宮司は、出来れば補修などして保護していきたいと話しています。
八木明日香
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