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気ままに北条さんぽ「後編」

こんにちは。芸術専門学群2年の林樹生です。この記事は後編であり、前編とは違ったもう少しミクロな視点で北条という地域を読み解いていこうと思います。引き続きお楽しみいただければ幸いです。



散歩といってもお腹が空いてしまってはどうしようもないので、まずは腹ごしらに前編でも触れたうどん屋でざるうどんを頼みました。待っている間は昆布・鰹の佃煮がつまめるのがちょっと嬉しい。他にも僕はカウンター席に座っていたのですが、キッチンの入り口にお子さんのものと思われる落書きのメモが貼ってありほっこりしました。

さて肝心のうどんはというと、うどんにネギと生姜、天かすなどの薬味がついているだけという本当にシンプルなザ・うどんという感じ。しかし食べてみると、細麺ながらしっかりとしたコシがあり、食べ応えのある麺で本当に美味しかったです。これを読んでいるみなさんもいく機会があればぜひ食べてみてください。


お昼の街を散策していると「北条ふれあい館」という「場」に出会いました。元は呉服屋であった建物をコミュニティーセンターとして再利用している場所で、北条米スクリームを食べながら、そこにいたおばあちゃんやおじいちゃんたちと色々な話をしました。僕が筑波大学芸術専門学群(環境デザイン領域)であることから、以前北条で行われたADPのプロジェクトの話をしてくれたり、ふれあい館にあった障子の木枠を用いた作品(’12年竜巻の復興プロジェクトの一つ)の説明をしてくれたりしました。このように、僕のような初めて来た人でも気軽にふらっと立ち寄ってコミュニティに参加できる場が、街と同化して存在していることはこの地域の魅力なのではと感じました。このふれあい館以外にも「iriai tempo」という別のコミュニティスペースがあったので、今度はそこにも訪れてみたいです。


ここで少し私の専攻する環境デザイン的な視点からこの「場」をみていこうと思います。入り口は特定のものがあるわけではなく道から土間が地続きになっているような造りになっているため、入ってくるのにもあまり障壁が少ないように感じました。これはこの場自体が公共的な性格を持っているからというのもありますが、このように店内と屋外の間にある土間や軒下が両者の境界線を曖昧にする役割を担っていて、これにより流動的な滞留がしやすくなっているのかもしれないと考えました。またふれあい館は内装や運営している方々(主に高齢の方)により祖父母の家といった感じで、初めてなのにどこか懐かしいような親しみやすさがあり、それも入りやすさの要因だなと感じました。


ふれあい館で話に花を咲かせていると、着物を着た僕と同じくらいの年齢の人が入ってきました。話をしてみると同じ筑波大学の院生であり、北条という地域に魅せられてさまざまなボランティアであったりイベントの開催に携わっている方だということが分かりました。一緒に話していたおばあちゃんの一人が「あの人は北条に欠かせない人だ。」というようなことを話していたのが印象的でした。村社会にある排他的な態度ではなく、その院生の方や僕のような初めての人も関係なく受け入れてくれる寛大さを感じここに来ていいんだという安心感を感じました。

その院生の方と話してると、矢中の杜という建物がつい最近「国登録有形文化財」に登録されたということで実際に連れて行ってくれるということになりました。


この建築物は一見普通に見える部分でも、よく見ると色々な工夫が凝らされていて非常に興味深い点がたくさんありました。写真は建物の一番奥に位置する食堂であり、後ろの壁には岩絵具で描かれた美しい花がたくさんあります。岩絵具は湿気により劣化しやすい特徴があるのですが、この建物は空き家だった時期がありその間にもほとんど劣化することなく美しく保たれていたそうです。つまり人の出入りがなくても自動的に換気できる仕組みが作られており、それにより湿気が溜まらないようになっていたようです。この部屋以外にも建物が自ら呼吸するような仕組みが随所に見られ、まるで建物が生きているような感じを覚えました。その他にも様々な工夫が施されていてとても面白かったです。


今回北条に3時間ほど滞在したのですが、それだけでもこんなに面白いところを発見することができました。まだ全然見られていない場所やものやことがたくさんあるので、ぜひまた足を運んでみたいと思います。


ここまで読んでいただいき、ありがとうございました。少しでも興味が湧いたらぜひ行ってみることをお勧めします。きっといつもと違った豊かさに気づけるはずです。

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