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桜川をまたぐ『太田橋』

こんにちは。芸術専門学群3年の芹川瑠美です。


某日、雲ひとつない快晴のもと空を映すような桜川と、遥かに悠然とそびえるはつくば山。

これは大曽根から小田地区に向かう途中で見つけたスポットです。

つくば千代田53号線の途中に通ることになる、桜川をまたぐ橋の上でした。

親柱には平仮名で「おおたはし」と記されていました。

見下ろす川のその流麗なせせらぎは、穏やかな冬の陽気を閉じ込めたようでした。

側の木々には白い手袋やビニール袋が引っかかっています。一定のラインから下に集中しているのをみるに、増水の時に流れてきたものかもしれません。

川幅はおよそ30mほどです。目に見える範囲に整備された岸辺はありません。

地元の人によると、桜川をずっと辿った先で釣りをしている人にしばしば出会うそうです。


大橋と言うには小さく、由緒を問うには近代的コンクリート造で、面白みなく佇んでいるように見えるでしょう。しかし確かに交通を支えている、生活に不可欠な橋です。

自転車を止めた私の後ろを車が何台も通り過ぎていきました。

ここは、地図上でも小田地区に向かうに数少ない橋なのです。

目に見える環境を考えるときに距離によって風景をとらえることがあります。


遠景(えんけい)とは遠くに見える景色のことです。ここでは空と山に当たります。二つが一体となり、空の青さと山の暗さのコントラストが眩しく映えます。また、ぼんやりとした山のアウトラインによって仔細は分からずともその大きさ、形が捕らえられます。


近景とは、すぐ近くに見える景色のことです。細かな葉の茂りや質感を目で分かる範囲です。ここでは手前の草や川の下部が該当します。目を凝らさずともその茂りの豊さと、揺らぐ水面のさざやかな照り返しがよく分かります。


中景(ちゅうけい)は近景と遠景の間にある景色のことです。詳細は分からずとも色や明るさに加えそのものの形や配置を理解できます。

曇りの日にはじっと山が空に押しつぶされるように沈んで、また違う風情に彩られます。

桜川は生き物などいない風に静まりかえり、遠くまで灰色の線が引かれただけとも思える、茫洋とした景色です。それはそれで、じっと見つめていたくなります。


残念なのは、遮るものがないために風が吹き曝しで寒いことです。

ですから、この景色のためだけにやってくるには割に合わないかもしれません。

ここは何かの用事で橋を渡るときにふと顔をあげた瞬間、目に飛び込んでくるのだと思います。車の運転がてらに、あるいは散歩のついでにでも。

日常の延長で発見される、人工物の合間を縫うような、綺麗な何でもない景色として。


もし小田の方へ向かうのであればぜひこの橋の上でほんのひと時顔を川に向けてみてください。四季折々、天気によって、ちょっとだけあなたの胸がすくかもしれません。


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