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執筆者の写真健介 山田

川と神社と町と人

こんにちは。理工学群2年の山田健介です。


私は記事「歩いて見つけた"ランドスケープ" 神社に庭園技法!?」の執筆にあたって上郷地区に位置する金村別雷神社を訪れました。つくば駅からつくばエクスプレスで万博記念公園に、そこからはつくば市のコミュニティバス"つくバス"で移動しました。貸し切り状態のバスに揺られること15分、金村別雷神社前というバス停で降車し、いざ参拝のはずが、どこにもそれらしいものは見当たりません。それもそのはず、神社はバス停のある上郷集落を抜けて堤防を越えた場所、徒歩でおよそ10分の場所にあるのですから。どこが"前"だよ、という気持ちを抑えて夏の日差しのもと歩き始めました。その道中、都市計画を学んでいるからか、ふとこんな疑問が浮かびました。どうして神社だけが集落から外れた位置、しかも堤防の逆側にあるのだろう。この答えを探るため、いろいろ調査してみました。


まずは神社の周りを観察してみましょう。

ここは、境内のすぐそばにある、参拝者用の駐車場です。現在は草原と林しか見当たりませんが、実はここには昔、鳥居前町が存在していたのです。鳥居前町とは、有力な神社の周辺に参詣客や神社関係者を相手にする商工業者が集まって形成された町のことです。つまり、寺院の周辺に形成される門前町の神社バージョンです。ここでも、江戸後期には参道沿いに250mにわたって町が形成され、宿屋や土産物屋が多数出店していたそうです。

どうやら、最初から神社だけが孤立して立地していたわけではなく、むしろ集落の中心的な存在だったことがうかがえます。ではなぜ、神社だけを残して鳥居前町だけが跡形もなく消滅したのでしょうか。謎を解くカギは、すぐそばを流れる川にありました。


こちらがその川です。写真の右端には鳥居が写っています。冒頭の道のりの説明で気づいた方もいると思いますが、この神社、堤防の内側にあるんです。こんなにも川のすぐそばにあるなんて驚きですね。

この川は利根川第二の支流、小貝川です。写真からも分かるとおり、小貝川自身が一級河川に指定されている、かなり大きな川です。しかも、昔からすぐに氾濫を起こす暴れ川でした。そこで、昭和になってから流域で堤防が建設されていくことになりました。上郷地区でも1960年代には堤防が建設され、それに伴って集落が丸ごと堤防の外側へ移設されたのです。これが、鳥居前町がなくなった理由です。でも、このとき神社だけは元の場所に残されました。1000年以上もこの場所から人々の生活を見守ってきたのですから、簡単に移設することはできなかったんでしょう。しかも、こんなに川の近くにありながら境内が浸水したことはないそうです。昔の人の知恵か、神様の力か・・・。

このような経緯で神社だけが集落から離れて立つことになったんですね。


原因が堤防だと分かったところで、その上を歩いてみました。

一枚目の写真は堤防の上から内側を、二枚目の写真は外側を写したものです。

堤防の内側には神社のほかには田んぼと畑と藪があるだけでした。昔からこの辺りは農業が盛んな地域だったので、堤防が建設された後も農地として残されたのでしょう。私が歩いている時も、畑で草刈りをしている方がいました。でも、それ以外に人の生活を感じることはできませんでした。堤防の内側は洪水時には浸水してもよい場所なので、当然といえば当然ですが、昔は町があったと思うと寂しさを感じてしまいます。

一方で堤防の外側には住宅がならび、市街地になっています。以前の鳥居前町はここに移設されたのです。集落の中を散策してみると、町工場がいくつも立地し、機械の音が響いていました。庭で花の手入れをしている人もおり、人気を感じられる町でしたが、崩れかかった空き家も所々にあり、地方都市が直面している困難はここにも迫っているようでした。


このように、集落と分離してしまった金村別雷神社ですが、人々とのかかわりまで失われてしまったわけではないようです。私が参拝している時も、30℃を超える暑さにもかかわらず3組ほどの参拝客に会いました。さらに、近くに住む学生さんにも合うことができました。放課後はよく神社の境内で遊ぶのだそうです。

ほかにも神社と人のかかわりが感じられるものがありました。

こののぼりは境内で見つけたものです。金村別雷神社では毎月第2土曜日に骨董市が開かれているようです。インテリアに結構人気なんだとか。私が訪れたのもたまたま土曜日でしたが、3週目でした。残念。


金村別雷神社は建立されたからずっとこの場所で人々の生活を見守ってきました。堤防の建設によって町と分離してしまいましたが、人とのつながりまで失われたわけではありません。これからもずっと、この場所で人々とともにあり続けるのでしょう。

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